ジェーコブス氏に関する文献について。
A.Jacobsに関する二次文献は数多くあります。彼の弟子たちや同時代に活躍した音楽家による、ジ ェーコブスの伝記、ブレスビルダー等の呼吸器具を導入した彼の呼吸法に関する研究、教育者としての歴史、賛辞が雑誌の投稿や単行本、学位論文として残されています。
http://www.windsongpress.com/jacobs/Bibliography.htm を参照ください。
文献の数の変遷をみると、死後7件、生前54件、総計56件の文献があります。内訳は、年代不明なもの2点をのぞいて、50年代に初めて伝記が執筆されて以来60年代に1件、70年代に6件、80年代に31件、90年代に11件。
シカゴ響を去る88年前後の記事が最も多く、”TUBA JOURNAL”や”BRASS BULLETIN”といった有名雑誌に数々の記事が寄せられています。21世紀に入ると、ジェーコブスの管楽器教授法に関する博士論文が4本執筆されています。
伝記は生前・死後ともに様々な人によって論じられていますが、70年代から80年代前半には、ジェーコブス氏は主にシカゴ響のテューバ奏者としてその功績が取り上げられ、80年代後半以降は圧倒的に、呼吸法を中心とした彼の音楽教授法がテーマとなっています。
ここでは、ジェーコブスの弟子たちによって出版された単行本のうち、代表的な5つの著作を挙げておきます。伝記的記述を含む教育者・呼吸法研究者としての姿がつづられているものです。
Frederiksen, Brian: Arnold Jacobs : song and wind; edited by John Taylor, WindSong Press, 1996.
M. Dee Stewart, Arnold Jacobs: The Legacy of a Master. Instrumentalist Co, 1987.
Kristian Steenstrup: Teaching Brass. Aarhus University Press, 2004.
Bruce Nelson: Also Sprach Arnold Jacobs: A Developmental Guide for Brass Wind Musicians. Polymnia Press, 2006.
Luis Loubriel: Lasting Change for Trumpeters: The Pedagogical Approach of Arnold Jacobs. Scholar Publications, 2006.
私がこのブログを書いてゆくために選んだものはこの二冊。おそらく最も有名な「song and wind」と「Teaching Brass」です。
いづれもジャパン・テューバ・セ ンター(http://www.japantubacenter.com) で購入。
「song and wind」は、ブライアン・フレデリクソンというJacobs氏のアシスタントの著作。前半は演奏家としての伝記が、インタヴューや講演の記録を交えて論じられ、後半ではJacobsの呼吸の学術的研究について、簡潔かつ詳細に報告されています。
「Teaching Brass」は、デンマーク人が著者であり、デンマークの原著の英語訳です。題名のとお り、Jacobs氏の教授法の確立にいたるまでを、呼吸法の医学的研究として端的に論じています。
さて、次回からはこの二冊の英語文献を抄訳しながら、アーノルド・ジェーコブスの教授法の理解 を目指してゆきます。ブレスビルダーをはじめとする、呼吸練習器具の導入の経緯、そしてその意 義について、最終的に展望が開けることを願います。